より高度な矯正方法
- 治療の確実性が増すため、治療期間は従来より短くなる傾向があります。
- 装着しなければならない矯正装置を減らし、患者さんの協力度を最小限にとどめ、治療中のストレスを軽減させます。
- 確実な固定源を確保することにより、歯を抜かずに矯正できる可能性が広がります。
- 外科的なアプローチが必要なケースを、矯正歯科単独での治療にできる可能性が広がります。
- インプラントを埋め込むための手術が必要です。
- 術後にインプラント周囲を清潔にしていないと、歯肉炎などの感染を起こす場合があります。
- スクリューが脱落した場合、違う部位に再度埋入する必要があります。
歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療(Temporary Anchorage Device: TAD)(インプラント矯正)とは

生体親和性の高いチタン合金製のスクリューを矯正歯科治療の期間中に一時的にあごの骨に埋め込み、それを歯を移動させるための固定源として用いることにより、これまで困難とされていた歯の移動を可能とします。
治療期間の短縮、外科的なアプローチが必要な治療を矯正歯科単独での治療にする、歯を抜かない適応例の拡大、患者さんの治療への協力度を最小限に済ませることができるなどのメリットがある、新しい矯正歯科治療です。
一般的にインプラントといえば、歯がなくなった場所にチタン合金製の人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着し、天然の歯と同様に機能させる治療をいいます。よって、矯正歯科治療で使用するインプラントと前述の補綴用のインプラントとは異なります。
歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療が生まれた背景

通常の矯正歯科治療では、ワイヤーで結ばれた歯と歯がお互い綱引きすることによって移動していき、歯並び・咬み合わせが整っていきます。
歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療では、顎の骨に埋め込んだスクリューを固定源として歯を引っ張って移動させていくのです。インプラントスクリューを支点として歯を移動させると、綱引きの反作用で奥歯が前に動いてしまうようなこともありません。

また、通常の手法では歯とワイヤーのある部分からしか固定源が得られませんでした。
歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療の場合、しっかりとしたあごの骨の部分なら比較的自由に固定源を求めることができるため、困難な部位への歯の移動ができるようになったのです。
歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療のメリット・デメリット
メリット
デメリット
歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療の手順
【1】インプラントスクリューの植立




術後腫れることもありますが、2~3日で治まりますので心配ありません。
術後に痛みが残る場合は鎮痛剤を処方いたしますが、基本的に日常生活に支障をきたすことはありません。
【2】インプラントスクリューの経過観察
スクリューの植立が安定するまで、最初の2週間ぐらいはあまり歯ブラシなどを当てたりせずに安静にします。
安定するまでおよそ2~3か月待ちます。
【3】歯の移動の開始

十分安定したら、スクリューを固定源として、エラスティックやコイルスプリングを使って歯の移動を開始します。
治療中にスクリューが緩んだり外れてしまったりしたら、再度新しいスクリューを違う部位に埋入します。
【4】インプラントスクリューの撤去
歯の移動が終わり、スクリューが不要となったら撤去しますが、埋入時と逆回転して外します。
その際、ほとんど痛みは感じません。外したあとは、およそ1週間以内に元の状態に治ります。
固定源を確実にコントロールすることは、矯正歯科治療において最も難しい課題です。通常の矯正歯科治療において、歯の移動に際しては強固な固定源が求められるケースが多くあります。しかし、作用・反作用の法則に従えば、固定源となる歯を動かさずにほかの歯を動かすことはほとんど不可能といえます。

このことにより、これまではヘッドギアなどの顎外固定装置を固定源の加強のために使用してきました。ヘッドギアなどの矯正装置は可撤式(取り外しができる)装置ということもあり、患者さんの協力度にその効果がゆだねられることとなり、十分な協力が得られない場合、良好な治療結果が得られないことも多々ありました。
歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療を選択することによって強固な固定源を確保して矯正歯科治療ができるようになったということは、ドクターにとっても患者さんにとっても非常に意義のあることであり、これまでよりはるかにトリートメントプランが立てやすく、また実行できるようになったといえます。