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    口呼吸

    “口呼吸”とは鼻からの呼吸が行えず、長時間にわたって口から呼吸することをいいます。

    何かに熱中していて、ぼんやりと考え事をしていて、気づいたら口を開けていた……という経験は誰にも一度はあると思います。

    しかし最近では、日常的に口が開いたままになる、いわゆる口呼吸のこどもが増えています。“口呼吸”は歯並びの悪化や口腔内および全身の疾患につながる可能性があります。

    口呼吸になってしまう原因について

    ①口唇閉鎖力(口を閉じる力)の低下

    口呼吸

    口呼吸の原因の一つとして、口唇閉鎖力の低下 があります。

    例えば、鼻炎などのアレルギー性疾患があると鼻で息がしづらく、口呼吸が常態化。やがて鼻呼吸をしなくなり、口唇閉鎖力は落ちていきます。

    また、出っ歯のように物理的に口を閉じられない状態も、口唇閉鎖力の衰えを招きます。

    次に口の周りにある口輪筋の筋力低下。今の時代、硬い物を前歯で噛み切ることが少なくなっており、またシャボン玉や口笛を吹く、風船ガムを膨らませるといった口遊びもあまりしなくなりました。

    つまり、昔と比べて口輪筋を鍛える機会が減っているといえます。

    ②鼻咽腔疾患による弊害

    もう一つは鼻咽腔疾患による鼻閉のため鼻呼吸が困難になったことによるものがあげられます。

    赤ちゃんの時には生理的に鼻呼吸しかできませんが、成長するにつれ口で呼吸できるようになります。鼻閉があると楽な口呼吸が習慣化し、鼻呼吸しなくなるようです。

    口呼吸が及ぼす健康への悪影響

    1、歯並びを悪化させる

    口呼吸は、開咬や上顎前突、叢生、交叉咬合といった不正咬合や歯肉炎などの歯周疾患の原因となります。

    どうして口呼吸が歯並びの悪化につながるのでしょうか?

    舌は「スポット」と呼ばれる口内の天井部分、上顎の歯列内に収まっているのが正常な状態です。そしてそこからの舌の圧力と唇の力、頬の粘膜からの圧力がバランスを取り、歯並びを正常な位置へと導きます。

    ところが口呼吸が癖になると、舌が下がり上顎から離れて力のバランスが崩れ、頬粘膜の圧力が優位に。頬からの力により歯列が内側に押され狭くなり、その結果、歯並びが乱れるのです。

    また、常に口を開けているので下顎が下へ下へと成長し、出っ歯や乱ぐい歯、開咬といった不正咬合が生じるほか、顔つきも変わってきます。

    口呼吸

    2、睡眠時無呼吸症候群の原因となる

    口呼吸の人は睡眠中も口を開けているので、仰向けで寝ると下顎や舌が下がって気道がふさがり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことがあります。

    3、免疫力が下がり、風邪をひきやすくなる

    口呼吸

    口が乾燥するので唾液の作用を受けられないのも重大な問題です。唾液の持つ抗菌作用は、病原菌やウイルスに対する免疫力を高めます。

    ほかにも唾液は粘膜保護や粘膜修復、歯の再石灰化を促しますが、唾液が枯渇すると、これらの作用がすべて受けられません。

    口呼吸は細菌やウイルスなどの異物、温度調節のされていない外気をダイレクトに吸うので、風邪やインフルエンザ、虫歯や歯肉炎になりやすいという報告もあります。

    4、視力の低下につながる

    視力の低下

    口唇閉鎖力は視力とも関係があり、最近の調査では、口唇閉鎖力が弱いこどもはそうでない子と比べ、視力が平均して0.3ほど低かったとのことです。

    これには顔面表情筋の働きが関係しています。前歯で食べ物にかじりつき、噛み切るとき、人は前歯だけでなく口の周りのあらゆる筋肉を緊張させます。

    さらに食べ物を引きちぎる際は、目も閉じていることがわかりますね。

    このように顔面表情筋をフル活用し、目の周囲の筋肉にも働きかけ、目の調節機能にまで影響を与えている可能性があるのです。

    現代の食生活では、食べ物を口にしやすいよう小さく切ることが多いため、前歯を使うことが減っています。その結果、口唇閉鎖力が弱いこどもが増え、視力にも影響を与えるというわけです。

    口呼吸を治すには?

    MFT(口腔筋機能療法)

    口呼吸改善には、歯科衛生士による口輪筋のトレーニング(MFT)があります。受け口や出っ歯など物理的な問題を矯正歯科治療によって解決し、それでも口呼吸が改善されない場合は、舌や口輪筋を鍛えるMFT(口腔筋機能療法)を行います。

    具体的には、舌先をスポットにあてたまま唾液を飲み込む練習など、段階的なメニューを通して舌の位置を正すほか、マウスピース型の口腔筋機能トレーナーを用いることもあります。

    ただし、これらの訓練は目に見える変化が少ないので効果を感じにくく、特に小児の場合はモチベーションを保つのが難しいといえます。

    MFTについて、詳しくはこちら